建築物省エネ法

2021年省エネ法改正で失敗しない省エネ適判3つのポイントと説明義務制度

2021年4月から、300㎡以上の非住宅が、いよいよ省エネ適判に変わり、300㎡未満の建物では「説明義務制度」が新しく始まります。

2017年の統計で省エネ適判に該当した非住宅はおよそ3,200棟で、省エネの届出を行った非住宅はおよそ14,000棟ありました。
これが全て省エネ適判になります。

一方、説明義務制度の対象となる建物はその数468,000棟。

この数字だけでも、十分これからの業務が大変になりそうなのが想像できますよね。

省エネ届出と省エネ適判の違いや説明義務制度の中身を理解すると漠然とした大変さがかなり現実味を帯びてきます。

非住宅の省エネ届出の場合、モデル建物法を使えば、なんとなく自分で計算して届出を済ませることが出来ていたかもしれません。

しかし、これまで行政では上がらなかった質疑が、審査機関からはしっかり指摘されます。

すると、計算まではなんとかできたけど、「質疑で言われていることがよくわからない」「どう対応したらいいのか分からない」など、多くの方がここでつまずき、短納期で対応してくれる省エネ計算代行会社をかなり追い込まれた状態で探し始めます。

全ての方がそうではないとしても、その数がこれまでの6倍となると、対応してくれる省エネ計算代行会社が見つからなくて、建築主に迷惑をかけることにもなりかねません。

そうならないためにも、省エネ適判と省エネ届出の違いや、省エネ適判の進め方をしっかりとおさえて、自分で進めること、外注に任せることを明確にして計画をスムーズに進められるように準備していきましょう。

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2021年建築物省エネ法改正の概要

2021年の建築物省エネ法改正では、これまで省エネ届出で済んでいた300㎡以上2,000㎡未満の非住宅が省エネ適判に変わり、10㎡以上300㎡未満の建物には説明義務制度が新しく始まります。

※説明義務制度は住宅、非住宅の両方で必要です。

省エネ届出では、着工日の21日前までに所管行政庁に届出をすれば工事は始められました。

質疑が上がってきても同時進行で進めることができましたが、省エネ適判は確認申請に連動するため、質疑まで完了しなければ、確認済証が発行されず、工事も始められません。さらに、最後に省エネ適判の完了検査もあります。

説明義務制度は省エネの必要性や効果、費用などの情報提供を行った上で、省エネ性能の評価を行うかどうか、省エネ基準への適合を希望するかどうかを確認し、説明不要となった場合はその意思表明を書面にし、建築士法に基づいて15年間保存していかなければなりません。

では、2021年の建築物省エネ法改正は、どの物件から適応されるのでしょうか。

省エネ適判に変わるタイミング

次の図の様に、2021年3月31日までに、確認申請と省エネ届出のどちらかを行えば、省エネ届出で終わり、4月1日を超えたものから省エネ適判になります。

省エネ届出と省エネ適判の切り替わり

この時期に確認申請や省エネ届出を検討されている方はスケジュールに特に注意して進めるようにしましょう。

説明義務制度が適用されるタイミング

省エネ適判に切り替わるタイミングが、申請機関や所管行政庁への書類提出のタイミングだったことに対して、説明義務制度は何を基準にして要否を判断するのでしょうか。

説明義務制度は、設計委託を行った日で判断されます。

建築士への設計委託が、2021年4月1日以降に行われた物件から、説明義務制度の対象となり、それよりも前に設計委託を行っておけば、説明義務は不要となります。

以下はそれを簡単にまとめた図です。

説明義務制度が適用されるタイミング

それではいよいよここから、省エネ適判と説明義務制度を詳しく見ていくことにしましょう。

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省エネ適判と省エネ届出の違い

まずは、省エネ届出と省エネ適判の違いについてポイントをおさえながら見ていきましょう。

冒頭でも少しふれましたが、省エネ届出は着工の21日前に所管行政庁へ届出を行えば、工事を始めることができました。

しかし、省エネ適判に変わることで、確認申請と連動するようになります。

確認申請と連動するというのは、省エネ適判で省エネ基準への適合が確認されないと、確認済証が発行されないので、工事を始めらません。

省エネ適判の大まかな流れは次の表の通りです。

ポイント1:省エネ適判が通らないと確認済証が発行されない

ここが1つ目の大きなポイントになります。

省エネ届出を自分で行っている方の中には、「ちゃんとできているか分からないけど、省エネ届出を出したらうまくいった」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

その感じのまま、忙しくて余裕のないスケジュールで進めて、省エネ適判を自分でやって申請機関に提出したら、省エネ届出の時には無かった難しい質疑が上がってきて、予定通りに確認申請がおりず、工期が遅れてしまった。

店舗なんかですと、オープンが遅れて機会損失にもなりかねません。

実際にこれまでにも、省エネ適判に該当する物件から外注する様になったお客様がたくさんいらっしゃいます。

質疑に苦戦して、結局対応しきれずに外注したというのも実際にあった話しです。

特に法改正直後は申請機関も計算代行会社も業務量が増加し、短納期対応が難しくなるケースが十分に考えられますので、「自分でやってみたけれどダメだった」で大きな損害にならないように、余裕を持って省エネ計算の代行会社に依頼する様にしておきましょう。

ポイント2:使用できる設備はJIS規格が取れているもののみ

2つめのポイントは省エネ適判の審査を通すにはJISの取れた設備を使用しなければならないというもの。

これ、結構知らない方が多いんです。本当は省エネ適判だけでなく、省エネ届出でもJIS規格は必要なんですが、

「省エネの届出を行うこと」を重要視している役所が多いため、JISが取れているかどうかの審査までは行っていないのが実情というわけです。

しかし、審査機関ではその辺りもしっかりと審査しますので、指摘を受けますし、変更を求められます。
そうなってから変えるのは非常に手間と時間がかかってしまうのでしっかりとおさえておきましょう。

このあたりについては「JIS規格のない設備機器は省エネ計算で使えない!」で詳しく説明していますので、見ておいてください。

JISアイキャッチ
JIS規格のない設備機器は省エネ計算で使えない!JISが取れていない機器は建築で使えないって知ってますか?省エネ届出だから何とかなっていた「JIS問題」が省エネ法の改正で省エネ適判の範囲が広がり、大変な問題になってきています。 知らないと本当に大変なことになるので、今後のためにもしっかり理解しておきましょう。...

ポイント3:省エネ適判も完了検査が行われる

3つめのポイントは省エネ適判も完了検査が行われるということです。

これはつまり、工事の段階において省エネ適判に係る建材や設備の仕様等が変わる場合は、あらかじめ変更申請の手続きを行わなければなりません。

省エネ適判の変更申請には「軽微変更(ルートA~C)」と「計画変更」の大きく2つのものがありますが、変更があった物のおよそ8割~9割が軽微変更のルートCというものに該当します。

下図に省エネ適判の変更申請に関する内容を簡単にまとめました。

軽微変更のおおまかなスケジュール

実際に何に該当するかは計算してみないと分からないことではありますが、これまでの実績ではそのほとんどが軽微変更のルートCになってきました。

軽微変更のルートCになると、平常時でも省エネの再計算から完了検査受付まで1ヵ月以上かかることがありますし、法改正直後の混雑期にはもっと多くの時間がかかるかもしれません。

また、再審査費用も数十万単位で必要になりますので、資金計画にも注意しながらしっかりと進めていきましょう。

他にもまだいくつか、省エネ届出と省エネ適判の違いがありますので、これまでの内容と合わせて下の表にまとめておきます。

ここまで、省エネ届出と省エネ適判の違いを見ていきながら、2021年の建築物省エネ法改正で気を付けるべきポイントを解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?

確認申請だけでも誰かに代行して欲しいのに、省エネ計算まで同時に進めていかなければならないのは、本当に大変な状況だと思います。 必要最低限の費用と時間で確実に建築計画を進められるように、今から準備を進めていきましょう。

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説明義務制度の概要

2021年の建築物省エネ法改正で新たに始まる省エネの説明義務制度は、10㎡以上300㎡未満の住宅、非住宅に適用されます。

説明義務制度には、建築士から建築主に対する説明を通じて、建築主の省エネに対する理解を促すとともに、自らが使用する建物の省エネ性能を高めようという気持ちをもってもらうことに狙いがあります。

そのため、単に建物の省エネ基準への適合性の評価結果を建築主に伝えるだけでなく、あらかじめ省エネの必要性や効果についても情報提供を行うことが必要になります。

また省エネ性能の評価をより簡易的に行うための新たな計算方法も用意され、建築士への負担軽減も考慮されていますが、簡易的な計算方法というのはどうしても評価結果が悪く出てしまうように作られています。

そのため、同じ仕様の建物でも普段我々が行っている計算方法ならクリアできて、建材や設備を変えなくても済むのに、簡易的な計算方法で省エネ基準をクリアさせようとすると建築費が高くなってしまうかもしれません。

建築全体を考慮した費用と仕様の最適化と業務量の増加が許容範囲なのかどうかを考えて決める必要がありそうですね。

説明義務制度の流れと進め方

では、具体的に説明義務制度では何をしたらいいのでしょうか?
簡単にまとめると次の4つのステップで進めることになります。

STEP1 省エネの必要性や効果、費用などの情報提供
STEP2 評価・説明を希望するかしないかの意思確認
STEP3 省エネ計算を行って省エネ性能を評価する
STEP4 評価結果の説明

STEP1 省エネの必要性や効果、費用などの情報提供

ここでは省エネ性能の評価や説明を行うときに省エネ計算などに費用がかかることや省エネ計算に用いる計算方法によって計算の精度や費用が異なること、省エネ性能を向上するためには工事等にかかる費用や工期にも影響があること、省エネ性能を維持するためには完成後も適切なメンテナンスを行う必要があり、それにも費用がかかることなどを説明します。

他にも、パリ協定を踏まえた温室効果ガス排出削減量の目標や省エネルギー住宅の環境や健康への影響、省エネ性能の高い住宅、建物への支援措置などを説明します。

情報提供を行う時期に決まりはありませんが、設計内容に大きく関係するため、できるだけ早い段階で行っておく必要があります。

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STEP2 評価・説明を希望するかしないかの意思確認

STEP1で説明した内容をもとに建築主が評価や説明を必要とするかどうかの意思確認を行います。

ここで、評価や説明は必要ないという意思表示を建築主がした場合には、「意思表明書」を作成し建築士に提出する必要があります。

また、建築士は受領した「意思表明書」を建築士法に基づく保存図書として、15年間保存する必要があります。

評価や説明を必要とする場合には省エネ性能の評価後に「説明書」を作成するため、「意思表明書」は必要ありません。 「意思表明書」は国土交通省が作成したリーフレットなどを活用するのが良いでしょう。

STEP3 省エネ計算を行って省エネ性能を評価する

省エネ計算をした結果が省エネ基準に適合しているかどうかの確認をします。

増改築の場合には、増改築部分だけの評価ではなく、建物全体についての省エネ性能を評価し、省エネ基準を満たしているかどうかの確認を行います。

併用住宅や複合住宅の場合は、住宅部分と非住宅部分を個別に判断するのではなく、1つの建物として省エネ基準への適応性を判断します。

省エネ計算の手法も説明義務制度でのみ使える簡易的なものが作られました。

計算に必要な入力項目を減らしたり、設備の仕様を標準化し、選択式にして簡単に評価が行えるようになりました。

ただ、簡易的な計算方法では不利な計算結果がでるようになっているため、従来の計算方法で計算すれば省エネ基準をクリアしている建物でも、クリアできずに省エネ基準不適合となってしまうことがあります。

STEP4 評価結果の説明

建築士はSTEP3で行った評価に基づき、「省エネ基準への適否」や「省エネ基準に適合していない場合の省エネ性能を確保するための措置」について書面で建築主へ説明を行います。

説明は工事の着工までに余裕を持って行う必要があります。

ここで説明に使用した書面は「建築士法に基づく保存図書」として、建築士事務所の開設者が建築士事務所に15年間保存する必要があります。

評価の根拠となる省エネ性能の計算書等については保存図書の対象とはなっていません。

説明書面の例

説明義務制度では説明を行ったあとに生じた計画変更などは、変更が生じるたびに評価や説明を行う必要はありません。

ただ、省エネ基準に適合していると説明していたものの、計画変更によって省エネ基準に適合しなくなる場合は、省エネ基準に適合させたいという建築主の意向に沿わない設計になるため、再度説明を行うようにしましょう。

法に反する恐れのある説明方法

省エネ計算に係る費用や手間などから、意図的に説明義務を避けて通ろうとしてしまうと、法令に反する恐れがあります。

具体的には以下の様な行為などが、国土交通省の方から例示されています。

  • 評価や説明をそもそも行わない
  • 評価や説明の要否を意思確認で、「一般的には希望しないほうが多い」と説明しわざと評価や説明をしない方向に誘導する
  • 建築士の責任において評価を行わない(建築士以外の人が主体となって評価を行っている)
  • 設計、施工、契約とに関する多様な他の書面と合わせて説明書面を発行するのみで説明を行わない
  • 省エネ基準に不適合の場合に、省エネ性能を高める措置について、具体的な説明がない。

容易に信頼を失うことになりかねませんので、十分に注意して進めていきましょう。

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2021年建築物省エネ法の見分け方

では最後に、2021年4月以降の建築物省エネ法における省エネ適判・省エネ届出・説明義務の判別フローを確認して終わりましょう。

下図が2021年4月以降の建築物省エネ法の判別フローです。

2021年4月の建築物省エネ法改正後も開放部分などを除いた延べ床面積で判定を行っていきます。

建物全体で300㎡平米以上を超えた場合、省エネの届出が必要になります。

さらにその中で、非住宅部分の床面積が300㎡を超えると非住宅部分については省エネ適判が必要になります。 どちらも300㎡を超えている場合は省エネ適判と省エネ届出の両方が必要になります。

まとめ

2021年4月の建築物省エネ法改正を、省エネ届出と省エネ適判の違いを通して見てきましたが、いかがでしたでしょうか?省エネ適判に変わるということが、かなり具体的にイメージできるようになったのではないでしょうか。

省エネ適判はポイントを押さえたスケジューリングで進めないと、係るたくさんの人に損害が及びます。

忙しいからといって後回しにはできませんので、余裕を持って勉強や外注探しを進めておきましょう。

説明義務制度の新設でこれまで以上に省エネ計算が身近なもの変わります。

トラブルになって、信用を失わないように流れをおさえて準備を進めておきましょう。

少し先の物件に関する無料相談やお見積りでもかまいませんので、気になった方はこちらからお気軽にお問い合わせください。

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