JIS規格

JIS規格のない設備機器は省エネ計算で使えない!

JISアイキャッチ

みなさんはJISというものを知っていますか?

「聞いたことはある」「よく知っている」など様々かと思いますが、「それが省エネ計算と何か関係あるの?」と思った人は多いのではないでしょうか。

実は省エネ計算で使える設備の能力値というのは、JISに基づいて測定されたものに限られています。

つまり、JISに基づいて作られ、性能を計測された設備以外は建物に使えないということになるのです。

「でも、省エネ計算が必要な物件をこれまでにいくつも担当したけど、省エネ計算の代行会社などからはJISが必要だとは言われたことがない」

そんな声も聞こえてきそうなので、その辺りを詳しく説明しながら、来年度から施行される省エネ法改正で生じる問題点いっしょにお話ししたいと思います。

JISとは

まずはJISがどういうものかというのを簡単に抑えておきましょう。

JISはJapanese Industrial Standardsの略で、日本の産業製品についての規格や性能の測定方法を定めた「国家規格」です。

通常は任意の規格になりますが、法規などで引用された場合に強制力を持つようになります。

https://www.jsa.or.jp/whats_jis/whats_jis_index/より引用)

省エネ法でもJIS規格が引用されていますので、本来ならJISがとれていないとその機器は省エネ計算に使えません。

しかし、ある理由が原因でJISが必要であることが認知されていないのです。

JISが省エネ計算で認知されていない理由

なぜ、JISが省エネ計算で認知されていないのか。

それは、現在の建築物省エネ法では省エネ届出に該当する建物が圧倒的に多いからです。

なぜ省エネ届出にはJISが必要ないのでしょうか。

実はこれ、省エネ届出にJISが必要ないという認識も、そもそも間違いなのです。

なぜこのようなことが起きているかというと、「省エネの届出を行うこと」を重要視している役所が多いため、JISが取れているかどうかの審査までは行っていないからなのです。

しかし、省エネ適判になるとその名の通り、省エネ基準に適合することを義務としていることや民間の審査機関で審査を行っていることから、JISの有無についてもしっかり審査が行われます。

なので、すでに省エネ適判を経験されたことがある設計者にとってはJISのとれている機器を使用するというのは当たり前になっていますが、省エネ届出しかやったことがない設計者にはあまり認知されていません。

平成29年度建築着工統計でも、省エネ適判に該当する建物の着工数がおよそ3,200棟だったのに対して、省エネ届出に該当する建物の着工数は約39,000棟と圧倒的に多いところから、省エネ計算でJISの認知度が低い理由が見えてきます。

省エネ法改正とJISが取れていない設備が抱えるリスク

ここで、頭をよぎるのが2021年に予定されている省エネ法改正です。

この省エネ法の改正で、非住宅の省エネ適判の範囲が300㎡以上に拡大されます。

これが何を意味するのか、もうお気づきですね。

省エネ法の改正で省エネ適判の範囲が広がると先ほどあげた、省エネ届出に該当していた建物39,000棟が省エネ適判に該当するようになり、その全ての省エネ計算でJISを要求されるようになります。

それを知らずに設計し、省エネ計算の代行会社に出したら、「JISの番号教えてください」と問合せがくる。

JIS製品で設計をやり直すといったことがどこかで必ず起きてきます。

海外製品などはほとんどJISが取れていないので、そういった機器を使うことが多い方は特に注意が必要になります。

「2020年省エネ法の改正で変わる5つのポイント」という記事でも触れていますが、この法改正で審査機関などの業務量が今の6倍になり、思うように審査が進まない状況が予想されていますので、JIS問題でさらに追い打ちがかからないよう、このブログを読んでるみなさんは、今からJISがとれいている製品を使うように切り替えていってください。

省エネ法改正2020
2020年省エネ法の改正で変わる5つのポイント非住宅における省エネ適判の適用範囲拡大や、新たに創設される説明義務制度、省エネ届出の提出期限緩和、地域区分の見直し、簡易計算手法の導入など、まだなんとなく知っているだけの省エネ法の改正をポイントをおさえながら、少しずつ理解していきましょう。...

JISがない場合どうしたらいいの?

住宅性能評価・表示協会が出している「建築物省エネ法に係る設備機器の性能確認方法等に関するガイドライン」では

対象となる設備機器等の性能の担保等については、製造事業者等の対応が間に合わないことも想定されるため、当面は製造事業者等の示す性能の責任の所在を明確にした上での自己適合宣言も可能

としているので、JISが取れていなくてもメーカーが宣言書を出してくれていたり、審査に間に合うように対応してくれれば、省エネ計算の評価は行えるようになります。

JIS宣言書

しかし、こういった宣言書もない場合には、省エネ計算の評価が行えません。

今のところ、画期的な解決策もありません。

JISが取れている製品または宣言書のある製品を必ず使ってください。
審査で質疑があがりますし、完了検査でしっかりチェックされます。

適合義務なので、変更申請が必要になると、設計変更の手間だけでなく、審査機関への再審査費用が余分に必要になります。それもそんなに安い金額ではありません。

まとめ

省エネ計算とJISという関連がありそうで、あまり気にしていなかったものが、これからの省エネ法改正でより重要性を増していきます。

予想される省エネ適判の物件の増加数からも、かなり多くの設計者や建築主に影響が出る内容です。

それは決して軽視できるものではありませんので、関係がありそうなお仲間にもこの記事を紹介してあげると喜ばれるのではないでしょうか。
(共有用 URL https://sekkei-navi.jp/jis

まだ先の話ではなく、本来なら既に対応していなければならない内容です。 省エネの届出だって、いつJISについて厳しく言われるようになるか分かりませんので、始められるところから少しずつ対応していきましょう。

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