建築主から、「避難安全検証法を使って欲しい」と言われて、「どんな設計をしたら避難安全検証法って使えるんだろう?」とか、「避難安全検証法を使うのにどんな変更が必要なんだろう?」といった様に、困った経験ありませんか?
既存建物になると、変更できる部分というのはさらに限られてきます。
まずは避難安全検証法を使うための条件をしっかり理解して、お客さんからの急な相談に慌てないようにしておきましょう。
避難安全検証法は煙の降下時間と避難時間を計算して検討を行う
避難安全検証法では、煙の降下時間と避難にかかる時間を計算して、中にいる人達が直通階段や地上へ安全に避難できることを確認します。
その中で、デザイン性を保ちつつ、コスト面も考慮しながら、最適な方法を見つける作業を行います。 ちなみに、「安全に避難できる」というのは、煙が1.8mの高さに下りてくるまでに避難を完了するとう意味です。
ここでお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、天井高が低いのは避難安全検証法では不利になります。
既存の建物に避難安全検証法を使うために、天井高を変えるというのは、かなり難しいですよね。
その他、建物の構造以外にも、火災が起きてから気づくまでの時間や、火災が起きたときの人の行動パターンなどを考慮しながら、避難安全検証法の評価は行われます。
条件①:自力避難できる利用者が使う建物用途である
避難安全検証法の避難時間の計算では、自力で避難できることを前提に計算方法が作られているため、自力避難が困難と考えられる用途の階や建物には、避難安全検証法が使えません。
自力避難が困難と考えられる用途とは、病院、診療所、児童福祉施設、老人ホームなどが含まれます。
他には、計算に用いる数値で、「歩行速度」「在館者密度」「積載可燃物の発熱量」が告示に示されていない用途の室が含まれる階や建物にも避難安全検証法は使えません。
使えないわけではないですが、向いていないとされる用途に、共同住宅や戸建住宅、ホテルなどがあります。
そもそも戸建住宅は100㎡毎、共同住宅の住戸は200㎡毎に防火区画すれば避難安全検証法を使わなくても排煙設備を設置せずに済むからです。
他にも、住戸や客室の天井高さが低く、告示に示されている、積載可燃物発熱量が大きいため、多くのケースで安全性能基準を満すことが難しくなっています。
戸建住宅では、階段につながる廊下に面した室の扉を防火設備にすることなど、ほとんどないですよね。 こういった理由から、戸建住宅や共同住宅やホテルなどに、避難安全検証法はほとんど使われません。
条件②:主要構造部が準耐火構造または不燃材である
2つ目の条件は「主要構造部が準耐火構造または不燃材で構成されていること」です。
これは、建物の構造体自体が、火災によって先に燃えて崩れてしまい、避難施設などが、その機能を果たせなくなるようでは、避難にかかる時間の計算が成り立たなくなってしまうためです。
また、性能の劣るものにはそれよりも性能の優れたものを含むとされますので、主要構造部が耐火構造であっても避難安全検証法は使えます。
条件③:2方向避難ができる
建物はどこから火災が発生するか分かりませんので、どこからでも2方向以上の避難経路があることが必要です。
2つ以上の出口を設置することで、片方の出口近くから出火しても、もう片方の出口から避難ができるようにするためです。そのためには、2つの出口をしっかりと離して設置しなければなりません。
これは、室や階ごとに必要になる考え方で、2方向避難が出来ない部分をできるだけ少なくするようにするために、法令で2方向避難が出来ない範囲の上限が定められています。
+α:消防法で定められた排煙ではないこと
消防法では、自力避難が出来なかった人の救助時間を確保するために定められています。
例えば、物販店舗の1,000㎡を超える階が、無窓階となるとき、消防法の排煙が必要になります。
無窓階とは消防有効開口部の面積の合計が、床面積の30分の1以下のものをいいます。
避難安全検証法は建築基準法上の排煙は免除できますが、消防法の排煙は免除できませんので、物販店舗は有窓階にする必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか、同じ物件は2つありませんし、これらの条件をクリアしても、避難安全検証法を使って、目的の法令を除外できるとは限りません。
設計の変更ができなくなってからでは、避難安全検証法を使うことが、より難しくなってしまいますので、まずは下記の条件がクリアできているかどうかを確認していただいて、少しでも早い段階で私たちにご相談ください。
避難安全検証法利用条件チェックリスト
主要構造は準耐火構造または不燃材で構成されているか?
2方向避難は確保できているか?
自力避難できない利用者が使う用途の建物ではないか?(病院、福祉施設、老人ホーム、児童福祉施設)
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