長期優良住宅認定制度の新しい認定基準が2022年10月1日に施行されます。
主な内容としては、省エネ基準の強化や、建築行為を伴わない既存住宅の創設、共同住宅に係る認定基準の合理化があります。
特に省エネ基準の強化は、断熱性能等級がZEH基準に引き上げられ、これまで必要なかった一次エネルギー消費量についてもZEH基準でクリアが必要になり、かなりハードルの高い基準が適用されることになりますので、長期優良住宅認定を取得予定の方は2022年9月までに提出するのをおすすめします。
どの物件から新基準が適用されるか、新基準の適用ルールについても注意点などを解説していますので、合わせてご確認ください。
省エネ基準の強化
今回の制度改正では省エネ基準がZEH基準まで一気に引き上げられることになりました。
長期優良住宅認定制度の省エネ基準はこれまで、断熱等性能等級4(6地域でUA≦0.87)のみで構成されており、一次エネルギー消費性能についての基準はありませんでしたが、2022年10月1日の認定基準の改正により、断熱等性能等級5(6地域でUA≦0.60)と一次エネルギー消費量等級6(BEI≦0.8)のクリアが必要になります。
現行の建築物省エネ法で定められている、省エネ基準が断熱等性能等級4(6地域でUA≦0.87)、一次エネルギー消費量等級4(BEI≦1.0)と比べても非常に高い基準であり、実務面では省エネ性能アップの検討に手間や時間がかかり、断熱材や建具、設備などの性能アップによって費用の増加が懸念されます。
断熱等性能等級5(6地域でUA≦0.60)をクリアするためには、ダブル断熱のサッシやトリプルガラスに変える必要も出てきますし、一次エネルギー消費量等級6(BEI≦0.8)をクリアするために太陽光発電による削減は加味できないため、設備もほとんど全て変えなければいけなくなるなど、数百万単位のコストアップなることが予想されます。
さらに物価の上昇もあり、長期優良住宅認定の取得をやめてしまうことも考えられますので、長期優良住宅認定を取得予定の方は2022年9月までに提出するのをおすすめします。
災害配慮基準の創設
災害配慮基準は2022年2月に施行された基準で、既にご存じの方も多いかと思いますが、災害の危険性が特に高いエリア(土砂災害特別警戒区域など)や災害の危険性が高いエリアに建てる住宅については長期優良住宅認定が受けられなくなっています。
災害の危険性が高いエリアに建てる住宅については災害発生状況に応じた対策が講じられていれば、長期優良住宅認定を受けることができますので、事前に土砂災害、津波、洪水などの災害リスクの高いエリアに該当しないか申請先の所管行政庁でご確認ください。
例)浸水想定区域などでは、所管行政庁が求めた浸水対策を実施することで、長期優良住宅認定を受けられるようになります。
建築行為を伴わない既存住宅の認定制度の創設
これまで長期優良住宅認定制度で既存住宅は、一定の性能を有するものであっても、増改築を行わない限り認定を受けられませんでした。
しかし、今回の制度改正によって増改築がなくても、維持保全計画のみで認定を受けられる仕組みが創設され、「新築」又は「長期使用構造等とするための増改築」が行われた時期によって認定基準が設定されました。
建築行為を伴わない既存住宅の認定基準は下記の3つに分類されます。
- 平成21年6月4日以降に新築した後に増改築はしていない場合・・・新築時点の新築基準
- 平成28年4月1日以降に増改築した場合・・・増改築時点の増改築基準
- 平成21年6月3日以前に新築、又は平成28年3月31日以前に増築した場合・・・平成28年4月1日時点の増改築基準
新築や増改築時期の確認資料
これらの新築や増改築の時期の確認は下記の確認済証の交付日や建築工事届の申請日などで行ってください。
- 確認済証交付日
- 台帳記載事項証明書に記載の確認済証交付日
- 確認申請が不要な地域に住宅を建築した場合には、建築工事届の申請日
- 確認済証交付日
- 台帳記載事項証明書に記載の確認済証交付日
- 確認申請が不要な地域に住宅を建築した場合には、建築工事届の申請日
- 建築確認が必要ない増改築工事の場合は、工事請負契約書等の締結日
共同住宅に係る認定基準の合理化
小規模な世帯増加を踏まえた共同住宅や賃貸住宅の実態に合わせた基準が緩和されます。
賃貸住宅の特性を踏まえた基準の認定
- 維持管理、更新の容易性に係る専用配管の基準等は区分所有住宅以外では適用しない
- 可変性の基準について、床下空間等の高さを含めて必要高さを算定できるように合理化
耐震性に係る基準の見直し
- 一般的に用いられる保有水平耐力計算の結果を用いて簡易に変計画を確認する新たな計算方法の設定
- 新たな計算法による場合の基準値を「応答層間変形角が1/75以下」とする
共同住宅等に係る規模基準の見直し
- 共同住宅等の面積基準を55㎡以上から40㎡以上に緩和
その他近年の技術、知見の反映
- 劣化対策でRC造のかぶり厚を1cm減らせる外装仕上げ材を新たに設定
- 維持管理、更新の容易性で樹脂管等を、配管の切断工事を軽減する対策として新たに設定
新しい認定基準の適用ルール
従来の認定基準で長期優良住宅認定を受けたい方は、最初の申請を2022年9月30日までにまずは提出しなければなりません。
最初の申請が2022年9月30日を過ぎてしまうと、全て新基準が適用されてしまいます。
ただ、注意が必要なのは、最初の申請を2022年9月30日までに提出しても、新基準が適用される場合があります。
それは、民間の申請機関に長期使用構造等確認の申請を行った場合です。
この場合、別で所管行政庁に長期優良住宅認定の申請を提出しなければならないため、この申請が2023年4月1日以降になると新基準が適用されることになります。
民間の申請機関へ長期使用構造等確認の申請を2022年10月1日より前に出していても、所管行政庁への長期優良住宅認定の申請が2022年4月1日以降になると、改正後の新しい基準が適用されるということです。
まとめ
- 省エネ基準が強化され、断熱等性能等級5に基準が引き上げられ、合わせて一次エネルギー消費量等級6のクリアも必要になる
- 災害の危険性が特に高いエリアに建築される住宅は長期優良住宅認定が受けられない
- 建築が伴わない既存住宅も長期優良住宅認定が受けられるようになる
- 小規模な世帯増加を踏まえた共同住宅や賃貸住宅の実態に合わせて基準が緩和される
- 申請の提出が2022年9月30日を過ぎると新基準が適用される
全国200社を超えるお客様の設計関連業務を幅広くサポート!