ZEB

【図解付き】ZEBとは?ZEBの種類・判断基準や今後の展望について解説!

ZEBとは、「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略称で「ゼブ」と呼ばれています。

経済産業省資源エネルギー庁が発刊する「ZEBロードマップ検討委員会とりまとめ」(平成27年12月)によると、ZEBは、

先進的な建築設計によるエネルギー負荷の抑制やパッシブ技術の採用による自然エネルギーの積極的な活用、高効率な設備システムの導入等により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギー化を実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、エネルギー自立度を極力高め、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物
経済産業省資源エネルギー庁「ZEBロードマップ検討委員会とりまとめ」(平成27年12月)より引用

と定義づけられています。

ZEBとは

もう少し具体的な説明を加えると、ZEBとは室内環境の快適性は損なわずに、

  • 建築物の高断熱化や、日射の遮蔽などのエネルギー効率の高い設備の導入により、エネルギーの消費を抑える(省エネ)
  • ソーラーパネルなどの自然エネルギーを利用することによりエネルギーを創る(創エネ)

これらの機能により、一次エネルギー消費量を正味ゼロ以下とすることを目指した建築物のことを示します。

ZEBとは、いわばエネルギーの自給自足を図った建築物と言えるでしょう。

建築物においてZEB化を図ることは、エネルギー削減を目的とするだけではなく

光熱費の削減

快適性・生産性の向上

不動産価値の向上

事業継続性の向上

など、建築物の所有者にとっても大きなメリットが得られることもZEBの特徴の一つです。

この記事では以下の内容について解説します。

この記事でわかること

ZEBの種類とその概要

ZEBの種類に応じた判断基準

ZEBの今後の展望

ZEBの種類

ZEBは一次エネルギー消費量に応じて、以下の4つの種類に分類されます。

  • ZEB Ready(ゼブレディー)
  • Nearly ZEB(ニアリーゼブ)
  • 「ZEB」(ゼブ)
  • ZEB Oriented(ゼブオリエンテッド)

これら4種類のZEBについて、その概要と判断基準を解説します。

ZEB Ready(ゼブレディー)の概要とその判断基準

ZEB Ready(ゼブレディー)の概要

ZEB Ready

ZEB Ready(ゼブレディー)とは、「ZEB」への移行を見据えた先進建築物として、外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備えた建築物となります。

ZEB化実現のハードルが一番低いので、ZEB Readyから始めましょう。

ZEB Readyを達成するには、高断熱、日射遮蔽、昼光利用などによりエネルギー需要を減らす「パッシブ技術」や、高効率設備の導入によってエネルギーを無駄なく使用する「アクティブ技術」により省エネ化を図るなどの工夫が要求されます。

ZEB Ready(ゼブレディー)の判断基準

ZEB Readyの具体的な判断基準は以下の基準に適合した建築物となります。

再生可能エネルギーを除き、年間の一次エネルギー消費量から50%以上の一次エネルギー消費量削減に適合した建築物

ZEB Readyは、使用するエネルギーを50%以上とした建築物となり、「ZEB」やNearly ZEBとは異なり、「創エネ」に対する基準が定められていないことが特徴です。

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Nearly ZEB(ニアリーゼブ)の概要とその判断基準

Nearly ZEB(ニアリーゼブ)の概要

Nearly ZEB(ニアリーゼブ)とは、Nearly(=近い)が示す通り、後述する「ZEB」に限りなく近いエネルギー効率を持つ建築物のことを指します。

ZEB Readyが、年間の一次エネルギー消費量を50%以下とすることを要件とする一方で、Nearly ZEB年間の一次エネルギー消費量を正味25%以下まで抑えることを目指した建築物となります。

ZEB Readyとは違い「創エネ」が要求されることが特徴です。

Nearly ZEB(ニアリーゼブ)の判断基準

Nearly ZEBの具体的な判断基準は以下の全てに適合した建築物となります。

基準一次エネルギー消費量から50%以上の削減(再生可能エネルギーを除く

基準一次エネルギー消費量から75%以上100%未満の削減(再生可能エネルギーを含む

Nearly ZEBは、 従来の建物で必要とされるエネルギー(=基準一次エネルギー)のうち、建物の性能で50%削減し、かつ創るエネルギーで75%以上をまかなうことができる建築物となります。

「ZEB」(ゼブ)の概要とその判断基準

「ZEB」(ゼブ)の概要

「ZEB」

「ZEB」(ゼブ)とは、省エネにより削減されたエネルギーと、創エネにより創出されたエネルギーにより、年間の一次エネルギー消費量を正味0%以下まで削減する建築物のことを指します。

ZEBの種類で挙げた4つの中でも最も要件が厳しいのが、この「ZEB」となります。

総称であるZEBと区別するために、「ZEB」は完全なZEBと呼ばれています。

「ZEB」を達成するためには省エネを促進するだけでなく、太陽光発電など自らエネルギーを創りあげる「創エネ」化の仕組みも要求されることが特徴です。

「ZEB」(ゼブ)の判断基準

「ZEB」の具体的な判断基準は以下の全てに適合した建築物となります。

基準一次エネルギー消費量から50%以上の削減(再生可能エネルギーを除く

基準一次エネルギー消費量から100%以上の削減(再生可能エネルギーを含む

ZEBは、従来の建物で必要とされるエネルギー(=基準一次エネルギー)のうち、建物の性能で50%以上削減し、かつ創るエネルギーで残りのエネルギーをまかなうことができる建築物と定義づけられるため、超えるべきハードルは非常に高いと言えるでしょう。

「ZEB」の建物の紹介はこちら

ZEB Oriented(ゼブオリエンテッド)の概要とその判断基準

ZEB Oriented(ゼブオリエンテッド)の概要

ZEB Oriented

ZEB Oriented(ゼブオリエンテッド)とは、ZEBに新しく設けられた種類で、ZEB Readyを見据えた建築物として、外皮の高性能化及び高効率な省エネルギー設備に加え、更なる省エネルギーの実現に向けた措置を講じた建築物となります。

他のZEBよりも取り組みやすい判断基準が設けられおり、「ZEB Oriented」は、”ZEB Readyでさえも達成しにくかった”そのハードルが更に下がったものとなります。

このハードルとは、「パッシブ技術」や「アクティブ技術」などで省エネ化を図ろうとした場合でも、建築物が大型化するほどその省エネ効率は低くなり、大型建築物のZEB化は極めて困難というものとなります。

そこで、ZEBの普及を促進するための規制緩和措置として、ZEB Orientedが追加され、ZEB化の実現が困難と言われている大規模建築物等でもZEB化に取り組みやすくなったということが特徴です。

ZEB Oriented(ゼブオリエンテッド)の判断基準

ZEB Orientedの対象建築物は以下の通りです。

延べ面積が10,000平方メートル以上の建築物

また、延べ面積の制限に加え、ZEB Orientedの具体的な判断基準は以下の全てに適合した建築物となります。

建物の用途ごと*に再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から規定する一次エネルギー消費量を削減すること

更なる省エネルギーの実現に向けた措置」として、未評価技術(WEBPROにおいて現時点で評価されていない技術)を導入すること

*建物の用途ごとに求められる一次エネルギー消費削減量は以下によります。

  • A)事務所等、学校等、工場等は40%以上の一次エネルギー消費量削減
  • B)ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等は30%以上の一次エネルギー消費量削減

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これからZEBはどうなっていくか?

これまでに解説した通り、ZEBは気候変動対策やエネルギーの持続等に対する多くの課題に取り組むため、建築物に求められる重要な役割を担っています。

では、今後ZEBはどのように発展していくのでしょうか?

ZEBの今後について、考えられる3つのポイントを挙げます。

法整備によりZEBのニーズが加速する

高性能資材の開発が進む

補助金制度の設立や税制優遇措置が強化されていく

それぞれのポイントについて解説します。

法整備によりZEBのニーズが加速する

今注目されるZEBは、国や地方自治体だけでなく環境問題を取り扱う企業が積極的に取り組んでいます。

政府から発表されたロードマップでは、2030年に確認申請に連動する省エネ判定のクリア基準がZEBレベルに引き上げられることが決定しています。

住宅も省エネ適判に変わる?!建築物省エネ法の改正ロードマップまとめ 2021年11月に経済産業省から2050年のカーボンニュートラル実現に向けたロードマップが発表されました。 その中には省エネ適判...

内閣官房「地域脱炭素ロードマップ(pdf)」では、2050年カーボンニュートラルという野心的な目標が掲げられており、このカーボンニュートラルに向けて、政府は2030年までにZEBに関連する重点対策として以下の3項目を掲げています。

屋根置きなど自家消費の太陽光発電

公共施設など業務ビル等における徹底した省エネと再エネ電気調達と更新や改修時のZEB化誘導

住宅・建築物の省エネ性能等の向上

建築基準やエネルギー規制など、ZEBに関する法律が整備されれば、建築物のZEB化への移行が促進され、ZEBに対するニーズは大幅に加速するものと考えられます。

高性能製品の開発が進む

2030年の省エネ判定のクリア基準の引き上げに伴い、2030年以降に建物を建築しようとする場合、これらの省エネ基準に適合させなければ、そもそも建築ができないということを意味しています。

これを受け、ZEBを実現するためには建築物を構成する建材や設備などが高性能化していくことが予想されます。

断熱性や遮熱性、耐久性、防音性など、多様な性能を兼ね備えた製品が求められるため、建材メーカーから次々に高性能な製品が開発されることになるでしょう。

今後、さらに高性能な建材が開発され、これらの製品がZEBの普及の促進に繋がるものと考えられます。

補助金制度の設立や税制優遇措置が導入される

前述した地域脱炭素ロードマップによれば、国は法令に基づく制度の施行、ガイドラインの策定や人材・技術・情報・資金の積極支援により、上記で挙げた項目に対する実施に協力するとしています。

国は、法令に基づく制度の施行、ガイドラインの策定や4-1(2)に示す国の積極支援メカニズムにより着実に協力する。

国・地方脱炭素実現会議「地域脱炭素ロードマップ」(令和3年6月9日)より引用

今や、カーボンニュートラルを実現することは我が国だけではなく、全世界においても急務とすべき取り組み事項であるため、何としてでも私たちの生活にZEBを浸透させていく必要があるのです。

これらから、今後、政府や自治体の取り組みにより、建築物のZEB化を加速させるための補助金制度の設立や税制優遇措置が強化されていくものと考えられます。

まとめ

本記事では「ZEBとは何か?」また、ZEBの判断基準や今後の発展について解説しました。

  • ZEBは、一次エネルギー消費量を正味ゼロ以下とすることを目指した建築物
  • ZEBは、Nearly ZEB、ZEB Ready、「ZEB」、ZEB Orientedの4つの種類に分類される
  • 法整備により今後ますますZEBの普及が加速する

気候変動対策やエネルギーの持続性に対し、ZEBはとても大切な位置づけとして注目されていることから、今後ますますZEBへの期待は高まっていくことでしょう。

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