以前、「CASBEEとは?届出義務とその仕組みについて」という記事で、CASBEEは日本でつくられた建物の性能評価システムで、建物内の生活環境と外側の自然環境の両方に及ぼす影響をそれぞれの側面から評価できる特徴を持っているというお話をしました。
今回はそのCASBEEで評価される内容や評価方法などを見ていきたいと思います。
CASBEEは建物の環境性能を5段階のレベルで評価している
まず、CASBEEの評価は戸建住宅を除くすべての用途に適用可能で、用途は下記表の9つに分類され、用途ごとに評価が行われます(表1)。
表1:CASBEEの用途一覧表
複合用途の計算方法
CASBEEによる評価は、用途によって評価項目や評価基準などが異なります。
そのため、複合用途の場合、それぞれの用途ごとに評価を行ってから、床面積の比率で評価点を加重平均し、最終的に建物全体としての評価点を算出します。(図1)
図1:3つの用途が複合している場合の評価方法
5つのレベルで行う評価方法
採点はQ(建築物の環境品質)とL(建築物の環境負荷)のそれぞれに設けられた評価内容に従って行われます。
評価項目や判定基準は用途ごとに異なりますが、該当する各項目をレベル1~5の5段階で評価していきます。
また、このレベルは、レベル3を一般的な技術・社会水準に相当する基準レベルとなるように調整されています。
各項目の評価点はこのレベルの数値をそのまま使用します。
例えばレベル3の評価を受けた場合は3点、レベル5は5点になり、この得点をBEEの算出に使ったり、複合用途の加重平均で使います。
つまり、「CASBEEの評価を行う」とはQ(建築物の環境品質)とL(建築物の環境負荷)のそれぞれに設定された評価項目で、レベル1~5のどこに当てはまるのかを1つずつ確認していくことなのです。
では、Q(建築物の環境品質)とL(建築物の環境負荷)にはどんな評価項目が、いくつくらいあるのでしょうか? Q(建築物の環境品質)とL(建築物の環境負荷)で評価されるものをそれぞれ見ていきましょう。
「Q(建築物の環境品質)」で評価する3つの項目と評価内容
Q(建築物の環境品質)は大きくQ1.室内環境、Q2.サービス性能、Q3.室外環境(敷地内)の3つの内容で評価されます。
「Q1.室内環境」の4つの評価対象
音環境
居室内への騒音の侵入を防ぐための遮音性能や室内で音が響くことを防ぐ吸音性能の高さを評価します。
温熱環境
室内の湿温度を調整する空調がどの様な設定や制御が行えるか、設備システムの性能を評価します。
光・視環境
自然光の効率的な利用、昼間の直射日光のまぶしさ対策、照度や照明制御などを評価します。
空気質環境
室内空気質を良好に保つための材料の選定、換気方法、施工方法などに関する配慮の具合を評価します。
「Q2.サービス性能」の3つの評価対象
機能性
働きやすさや居心地の良さを、「一人あたりの面積」や「天井高さ」、「情報設備への対応」「リフレッシュスペースの有無」、「維持管理への配慮」などで評価します。
耐用性・信頼性
建物を永く、より良い状態で使い続けられるかどうかを部品の耐用年数や建物の耐震・免震・制震・制振性能、各設備の災害時等の機能維持性能で評価します。
対応性・更新性
建物を永く使い続けられるかどうかを用途変更が可能かどうかなどをふくめて、「階高」と「空間の形状・自由さ」を評価し、設備の更新性を建築計画・設備計画の取組み姿勢で評価します。
「Q3.室外環境(敷地内)」の3つの評価対象
生物環境の保全と創出
生き物の生息できるポテンシャルがどれだけあるかを評価する。
まちなみ・景観への配慮
地域のまちなみ・景観に対するルール(まちなみガイドラインなど)にどれだけ配慮しているかを評価する。
地域性・アメニティへの配慮
地域の風土や文化への影響や地域社会との関係性への配慮など、敷地内外への快適性を高める取り組みについて幅広く評価します。
「L(建築物の環境負荷)」で評価する3つの項目と評価内容
L(建築物の環境負荷)では大きくLR1.エネルギー、LR2.資源・マテリアル、LR3.敷地外環境の3つの内容が評価されます。
「LR1.エネルギー」の4つの評価対象
建物外皮の熱負荷制御
空調で使用されるエネルギーを低減するための外皮性能を建築物省エネ法のBPIやBPImで評価します。
自然エネルギー利用
昼光利用や通風など自然エネルギーを直接利用する取り組みを評価します。
設備システムの高効率化
空調・換気・照明・給湯・昇降機等を建築物省エネ法のBEIやBEImで評価します。
効率的運用
エネルギーの消費量を監視するシステムの有無やエネルギーの運用管理体制を評価します。
「LR2.資源・マテリアル」の3つの評価対象
水資源保護
節水、雨水利用、雑排水の利用などから上水使用量の削減性を評価します。
非再生性資源の使用量削減
解体時にその建物や材料がどれくらい再使用・再利用しやすいかを評価します。
汚染物質含有材料の使用回避
汚染物質を含んだ材料の使用をどれだけ抑えられているかを評価します。
「LR3.敷地外環境」の3つの評価対象
地球温暖化への配慮
温暖化の原因となる運用エネルギーの削減、建設資材製造に関するCO2の削減、LCCO2削減に貢献する長寿命化の取り組みをLCCO2に置き換えて定量的に評価します。
地域環境への配慮
大気汚染物質の量を抑制する取り組みやヒートアイランド現象緩和に関する対策、地域のインフラ施設にあたえる負荷を低減するための対策を評価します。
周辺環境への配慮
振動、騒音、悪臭の防止や風害、日照阻害の抑制と光害の抑制に関して評価します。
省エネ計算はCASBEEの一部である
CASBEEは自己評価で行われる性能評価で、レベル3までは根拠を必要としませんが、レベル4と判定するものからは、判断理由を文章で明記し、根拠となる資料を提出しなければなりません。
CASBEEは2000㎡を超えると所管行政庁によって、届出の義務が発生するのは前回の記事でご説明した通りですが、このとき、省エネ計算の計算書も根拠資料の一部として提出する必要があるのです。
それはつまり、省エネ計算の計算書とも整合を取る必要があるということなのです。
そのため、CASBEEと省エネ計算を別々の会社に依頼してしまうと、業者間でのやり取りができないため、申請がスムーズにいかなくなったり、間に入って調整をしなければいけないなどの手間が発生します。
省エネ計算はできてもCASBEEはできないという会社は実際に多いですし、表向きには両方できるといっていても、受けてから別会社に出し、無駄な費用や時間がかかっていることがあります。
また、CASBEEを補助金の申請に使う場合などは、民間の審査機関で審査を行いますので、行政庁への届出とは違った大変さがあります。
CASBEEも省エネ計算と同様に審査機関や、そこの担当者によって解釈が変わりますので、評価実績の数や頻度、対応可能なCASBEEの種類まで検討段階で確認しておいた方がよいでしょう。
まとめ
2回にわたってCASBEEを解説してきましたが、「CASBEEっていったい何?」というところから、「CASBEEってこういうものなんだよ」って少し人に説明できるようになってきたのではないでしょうか。
最後に書いた省エネ計算との兼ね合いというのは、見落としがちになるポイントですので、今後、検討の際には参考にしてみてください。
当社も自社内で省エネ計算もCASBEEの評価も行っていますのでお気軽にご相談ください。
省エネ計算とCASBEEで余分に使ってしまっていた時間が削減されるなど、設計業務を楽にするお手伝いができると思います。
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