建築物省エネ法

省エネ適判と省エネ届出の違いとは?

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みなさんは普段、省エネ適判か省エネ届出だとどちらに該当することが多いでしょうか?

平成29年度建築着工統計では、省エネ適判に該当する建物の着工数がおよそ3,200棟だったのに対して、省エネ届出に該当する建物の着工数は約39,000棟と圧倒的に多いことが分かります。

そんな中、来年2021年度にいよいよ省エネ適判の該当範囲が300平米以上の非住宅に拡大されることになりました。

先ほどの統計を非住宅に限定して見てみても、省エネ届出に該当した物件がおよそ14,000棟あり、法改正によってこれらがすべて省エネ適判に該当するようになります。

現在、非住宅物件を主に設計していて、これまで省エネ適判に該当したことがない方にとっては「省エネ届出が省エネ適判に変わることで何がわるんだろう?」とか、「手間が増えたら嫌だなぁ」と感じ始めているのではないでしょうか。

実際、省エネ適判は確認申請に連動する仕組みになっていますので、基準をクリアしていないと確認申請がおりない、基準をクリアするために仕様変更やそれに伴う検討が必要になったり、さらには着工後に設計変更が発生すると省エネ適判の審査に関する費用も追加で発生してしまうなど、手間の倍増だけでは済まない話になっています。

では、実際の手間や費用などはどのように変わってくるのでしょうか?
省エネ届出との比較などからその違いを見ていきましょう。

省エネ適判は再審査に手数料と時間がかかる

まずは省エネ計算の届出と適判の概要を図にして比べてみました(図1)

図1:省エネ届出と省エネ適判の比較表

省エネ適判と省エネ適判の比較表

この比較から見えてくる特に注意しなければならない点は、変更申請費用の部分です。

省エネ計算の再計算費用は省エネ計算の代行会社などによって変わりますので、ここでは割愛しますが、省エネ適判で計画変更を行う場合、設計変更にかかわる審査手数料というのが新たに発生してしまいます。

その額も数十万単位で発生しますので、建築確認の計画変更費用とあわせてかなり大きな負担になってしまうのです。

省エネ届出の感覚で進めているとここは思わぬ落とし穴になりかねません。
とは言え、注意していてもやむを得ない変更はつきものなのでとても難しい問題ではあります。

この後詳しく説明しますが、建築確認の完了検査のときに省エネ適判についても、適合判定を受けた図面通りに施工されているか、現場で検査が行われます。

完了検査時に不適合が見つかり、変更申請を指示されてしまうと、再審査で追加の審査手数料が掛かってしまったり、図面の修正、省エネの再計算に審査を受けなおすなどの時間が余分にかかるので、引き渡しが遅れてしまいます。

商業施設などでオープンが遅れると、非常に大きな機会損失を招きかねませんので、正しい知識をもって可能な限りのリスク管理をしておきましょう。

省エネ適判の流れをおさえる

今はまだ2000平米以上の非住宅だけが対象の省エネ適判ですが、今後のためにも省エネの変更申請の流れを少し確認しておきましょう。

まずは流れをおおまかにまとめてみました(図2)

図2:省エネ適判の流れ

省エネ適判の流れ

この図で見えてくるのが、省エネ適判の「適合性判定通知書」が交付されないと、確認済証が発行されないということです。

つまり、省エネ適判と建築確認を同時に進めていかなくてはならず、大きな会社の様に人や専門部署があればよいのですが、省エネ計算の専門性は非常に高いので、自分で進めるには業務負荷が高くなりすぎます。

省エネ計算の専門会社に頼む場合にも、納期に対する意識や対応してくれるスピード感が自分と同じでないと安心して任せられません。

さらには、適合義務がありますので、計算結果が基準を超えるとどこをどう直したらいいかなどの検討も非常に手間のかかる作業になります。

完了検査では、「どこまで細かくみられるのか」「検査員からの質問にうまく答えられるだろうか」などといった悩みが出てきます。完了検査の立ち合いまで付き添ってくれるところって少ないんですよね。

省エネ性能に関する変更提案や完了検査の立ち合いなど、どこまで対応して欲しいかなども含めて専門家に相談しながら進めましょう。

省エネ適判の変更申請が生じると省エネの再計算から完了検査受付まで1ヵ月以上かかることがある

着工後に設計変更が発生するというのは正直なところよくある話しですので、変更があることも可能な限り見込んで進めていくことや、少なくともリスク管理として、変更発生から完了検査までどれくらいの日数や手間がかかるのかをおさえておきましょう。

まず、設計変更が発生した場合、建築物省エネ法では「軽微変更のルートA~C」と「計画変更」の大きく2つ分けられます。(図3)

図3:省エネ適判の変更届について

これらのどれにあてはまるかは計算しないと分からないので、事前に専門家に相談して、どんな申請書類が必要になるかなども調べておきましょう。

図にもありますが、仮に設計変更が発生した場合、省エネの軽微変更であってもその9割近くがルートC判定になり、省エネの計画変更同様に再計算と再審査が必要になり、変更申請手数料も必要になります。

再計算や再審査には省エネ計算で1~2週間、審査に3~4週間と変更発生から完了検査受付までに合計1.5カ月くらいの時間と費用が余分に発生します。

図面の変更や修正についてはここに含まれていないので、その分の費用と時間も考慮しておかなければなりません。

まとめ

省エネ適判は省エネ届出とは違い、計算結果も省エネ基準をクリアしなければなりませんし、クリアしなかったときにはどこを直せばいいかの検討や修正作業が必要になります。

さらに、同時進行で確認申請も進めて、最後には省エネ適判に関する完了検査の対応もしなければなりません。

これらの手間を考えると省エネの変更申請と建築の変更申請と現場監理を現場の最終段階で自分でやるのは現実的にほとんど不可能です。

省エネ適判の流れと注意点を正しく理解して、省エネ計算、質疑、仕様変更検討に完了検査の立ち合いまでを安心して任せられる省エネ計算代行会社に依頼する様にしましょう。

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