避難安全検証法

避難安全検証法とルートB1をやさしく解説

避難安全検証法という言葉を耳にしたことはありますか?

  • 知っていたけど、使ったことは無い
  • お客さんからの要望で避難安全検証法を使うことになった
  • 審査機関から避難安全検証法を使ったらどうかと進められた
  • 自分で何度かトライしたがどうもよく分からなかった

設計業務の中で必ず必要になるものではなく、設計手法の選択肢のひとつであるため長年設計をしてきたけど初めて使うという方も多くいらっしゃいます。

その言葉の難しそうなイメージも重なってとっつきにくさを感じている方も多くおられるようです。

そんな皆さんに向けて、今回は避難安全検証法のなかでも利用される機会が一番多い避難安全検証法のルートB1について分かりやすく解説していきたいと思います。

概要や仕組みをしっかり理解してスムーズに避難安全検証法を使った設計が進められるようにしていきましょう。

避難安全検証法の3つの設計ルート

避難安全検証法の設計ルートには、仕様規定で設計を行うルートAと性能規定で行うルートB、ルートCの3つがあります。

仕様規定とは・・・法文に従って設計した言わば一般的な設計手法のこと

性能規定とは・・・性能を客観的な数値で評価できるようにする測り方を定めたもの

同じ性能規定を用いたルートBとルートCの違いは、ルートBは告示で定められた計算方法を用いることに対してルートCでは告示で定められた計算方法以外の方法で建物の安全性を確認することにあります。

ルートCは告示で定められた計算方法ではないため、国土交通大臣の認定を受ける必要があります。

そのためルートCで計算を行うには膨大な時間と費用が必要になりますが、除外できる項目はルートBと変わらないため一般的な建物で利用される事はほとんどありません。

避難安全検証法のルートB1とは

避難安全検証法を構成するA~Cまでの3つの設計ルートの違いについて説明しましたが、実は避難安全検証法のルートBには「避難時間判定法」と「煙高さ判定法」という考え方の異なる2つ検証方法があります。

避難安全検証法が作られた当時は「避難時間判定法」という1つの計算方法だけであったため、避難安全検証法のルートBは「避難時間判定法」を表す言葉でした。

しかし、2021年に新たに「煙高さ判定法」という考え方が告示に加わることになり、それをルートB2と呼ぶことになりました。

そのため、従来の避難安全検証法がルートBからルートB1に名称変更されることになったというものです。

避難安全検証法のルートB1は「避難時間判定法」という手法を用いた計算方法で、避難開始時間+歩行時間+出口通過時間を足し合わせたものを避難完了時間として、火災によって生じた煙やガスの高さが避難困難となる1.8mに達するまでの時間までに、避難を完了できることを出火が想定される居室と階の出口が設置される室において検証を行います。

今回はルートB1にフォーカスをした解説になりますので、ルートB2に関する解説はまた別の機会にしていきたいと思っています。

避難安全検証法ルートB1の3つの検証方法

避難安全検証法のルートB1にはさらに区画避難安全検証法、階避難安全検証法、全館避難安全検証法の3つの検証方法に分けられます。

区画避難安全検証法、階避難安全検証法、全館避難安全検証法のうちどれを使うかで、除外できる規定も異なります。

区画避難安全検証法

区画避難安全検証法は各区画単位で避難安全検証法をかける方法です。

特定の区画だけ排煙規定を除外したりする場合に使用できる、一番小さな検証方法です。

区画避難安全検証法で計算したエリアは他のエリアの避難計画には使用できなくなりますので注意が必要です。

区画避難安全検証法で除外できる規定

項目 規定の概要
排煙設備 126-2 排煙設備の設置
126-3 排煙設備の構造
内装制限 128-5 特殊建築物等の内装(第2、6、7項および階段に係る規定を除く)自動車車庫等、調理室等

階避難安全検証法

階避難安全検証法はフロア単位で検証を行う計算方法で、居室からの避難と階全体からの避難の2段階に分けて検証を行います。

区画避難安全検証法よりも多くの規定を除外することができ、避難安全検証法の依頼の中でも一番多いのがこの階避難安全検証法です。

スーパーマーケットやドラッグストア、ホームセンターなどの物販店舗やパチンコ店などの集会場、カーディーラーのショールームで利用されるケースが多くなっています。

物販店舗では売り場面積を広げる目的で使われ、ショールームでは排煙窓を無くして全面ガラス張りのデザイン性の高い建物を設計するために用いられています。

階避難安全検証法で除外できる規定

項目 規定の概要
排煙設備 126-2 排煙設備の設置
126-3 排煙設備の構造
内装制限 128-5 特殊建築物等の内装(第2、6、7項および階段に係る規定を除く)自動車車庫等、調理室等
避難施設 119 廊下の幅
120 直通階段までの歩行距離
123 3 特別避難階段の構造
第1号付室の設置
第2号排煙設備の設置
第12号付室などの面積
第10号防火設備
124 1 物品販売業を営む店舗における避難階段等の幅
第2号階段への出口の幅

全館避難安全検証法

全館避難安全検証法は建物利用者が全員、安全に地上に避難し終えるまでの時間を計算し検証を行います。

全館避難安全検証法ではまず全てのフロアで階避難安全検証法が成立している必要があり、さらに階段を降りて地上まで避難できることを計算によって確認します。

全館避難安全検証法では検証法で除外可能な全ての規定を除外することができますが、その分クリアさせる難易度も高く、全てを思い通りのデザインに持って行くのは難しいとされています。

全館避難安全検証法で除外できる規定

項目 規定の概要
防火区画 112 7 11回以上の100㎡区画
11 竪穴区画
12 竪穴区画
13 竪穴区画
18 異種用途区画
屋外への出口 125 1 屋外への出口までの歩行距離
3 物品販売業を営む店舗における屋外への出口幅
排煙設備 126-2 排煙設備の設置
126-3 排煙設備の構造
内装制限 128-5 特殊建築物等の内装(第2、6、7項および階段に係る規定を除く)自動車車庫等、調理室等
避難施設 119 廊下の幅
120 直通階段までの歩行距離
123 1 避難階段の構造
第1号耐火構造の壁
第6号防火設備
2 屋外避難階段の構造
第2号防火設備
3 特別避難階段の構造
第1号付室の設置
第2号排煙設備の設置
第12号付室などの面積
第3号耐火構造の壁
第10号防火設備
124 1 物品販売業を営む店舗における避難階段等の幅
第2号階段への出口の幅
第1号避難階段等の幅

避難安全検証法ルートB1が使えない建物

建築コストを抑えたり、デザイン性の向上や売り場面積の拡大など魅力的なメリットが多いため、積極的に避難安全検証法を使って設計をしたいと考える設計者の方もいらっしゃると思います。

しかし、以下の条件のどれか1つにでも当てはまると避難安全検証法ルートB1は利用できなくなります。

避難安全検証法ルートB1が利用できない建物の条件
  • 消防法に係る排煙を除外したい
  • 自力避難できない利用者がいる用途の建物
    ex)病院、診療所、児童福祉施設、老人ホームなど
  • 主要構造部が準耐火構造または不燃材ではない
  • 1500 ㎡の防煙区画が確保できていない

避難安全検証法で除外できるのは建築基準法にある規定だけなので、消防法で定められた排煙などを除外することはできません。

そのため、開口部の面積合計が、床面積の1/30以下の無窓階には消防法の排煙が必になります。

また、100㎡の防煙区画も除外できますが、1500㎡以上の除外はできないため、その場合には1500㎡ごと防火区画をする必要があります。

主要構造部が木造だとそのままでは避難安全検証法が使えないなどの条件があるので設計する建物がこれらの条件に当てはまらないか確認を行ったうえで避難安全検証法の検討を進めるようにしましょう。

避難安全検証法ルートB1の進め方

避難安全検証法ルートB1の進め方としては、まず第一に先ほど説明した避難安全検証法ルートB1が使えなくなる条件に当てはまっていないかを確認します。

その上でどのタイミングで避難安全検証法の計算を行うかが大事になってきます。

私たちのところにくる避難安全検証法ルートB1問合せの中でもたくさんの方からご質問いただくのが、「まだ平面図しか出来ていないが、避難安全検証法ルートB1がクリアするか計算してもらうことはできるか?」というものです。

避難安全検証法でいつ計算するのかというのは、避難安全検証法で失敗しないためにとても大事なポイントになります。

避難安全検証法を初めて利用される場合、設計したままの図面でクリアすることはまずありません。

必ずどこかに変更が出ると思っていただいた方が間違いないと思います。

その変更を設計に落とし込んでいただく時間や設計の自由度が必要になります。

基本設計のできるだけ早いタイミングで一度計算を行い、変更内容を確認しながら進めていくのが良いと思います。

私たちが避難安全検証法の計算をする場合には平面図と部屋ごとの天井高や建具の情報をいただければ、大まかな計算はできますので、お気軽にご相談いただければと思います。

まとめ

  • 避難安全検証法ルートB1では煙が1.8mに降下するまでに避難できるか計算している
  • 避難安全検証法ルートB1は区画避難、階避難、全館避難の3パターンの検証方法がある
  • 区画避難、階避難、全館避難では除外できる規定が異なる
  • 一番よく使われているのは階避難安全検証法である
  • 避難安全検証法は設計の早い段階で計算するとスムーズに進められる
  • 避難安全検証法ルートB1は平面図と部屋ごとの天井高や建具の情報があれば計算できる

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