建築設計

2026年春スタート!「BIM図面審査」について解説

建築確認申請の歴史的な転換点が、いよいよ目前に迫っています。

2026年春から、建物の3Dモデルを活用した新しい建築確認申請「BIM図面審査」が始まります。

この新制度は建築業界へどのような影響を及ぼすのでしょうか?

本記事では、建築業界に大きな変革をもたらす「BIM図面審査」について、メリットから懸念事項まで、設計実務に関わる方々にポイントをおさえて分かりやすく解説していきます。

BIM図面審査とは

「BIM図面審査」は、2026年春から始まる建築確認申請です。

BIMとは「Building Information Modeling(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」の略で、建物と同じ3Dの立体モデルをコンピューター上で再現するシステムです。

建築業界では設計から施工管理、積算、プレゼンなど広く使用されています。

従来の紙の図面やPDFによる建築確認申請は、図面の整合性確認に多くの時間が必要でした。

しかしBIMで作成された図面は整合性が高いため、審査の作業を省略できるようになります。

国土交通省は、将来的にすべての新築する建築物の確認申請をBIMデータで行えるようにすることを目指しています。

建築確認申請でBIMの利用を広めることで、建築業界全体がBIMを活用しやすい環境を作ることが狙いです。

つまり設計事務所、建設会社、設備会社など、建物に関わるすべての事業者が同じBIMデータを共有して活用できるようにすることを目指しているのです。

まずBIMに対応可能な指定確認検査機関から段階的に導入が始まります。

さらに2029年春からはBIMデータそのものを審査対象とする「BIMデータ審査」へと発展していく計画がされています。

2026年のBIM図面審査で達成を目指しているもの
  • 整合性の高い申請図書の作成
    BIMを活用した図面の作成
  • 申請データの共通化・標準化
    参考テンプレートやモデリングルール活用の普及
  • 申請・審査の効率化
    参考テンプレート活用による凡例の共通化や
    図書表現の統一化・整合性確認の合理化

なぜBIM図面審査が導入されるのか

これまで建築確認申請の現場では、多くの課題を抱えていました。

図面間の整合性確認に膨大な時間が必要

まず意匠図、構造図、設備図など、複数の図面間の整合性を確認する作業には膨大な時間が必要でした。

例えば、柱や梁の位置が各図面で正確に一致しているか、設備配管のルートが構造材と干渉していないかなど、細部にわたる確認が必要だったのです。

書面の保管や管理に手間がかかる

また書面での申請では図面の保管場所の確保が必要で、経年による劣化や災害時の紛失リスクがありました。

さらに、修正が必要な場合は再度図面を印刷して提出しなければならず、時間とコストが生じていました。

対面での申請手続きによる時間的制約

対面での申請手続きについても、申請者は審査機関の営業時間内に窓口へ行く必要があり、地方の設計事務所では遠方の審査機関への移動時間も大きな負担となっていました。

これらの課題を解決するため、国土交通省は建築確認のデジタル化を段階的に進める方針を打ち出しました。

BIM図面審査はその第一段階であると言えるでしょう。

BIM図面審査のメリット

BIM図面審査には、事業者と審査者双方にメリットがあります。

事業者側のメリット

整合性の高い図面が作成できる

第一に、BIMソフトウェアを使用することで、図面間の整合性が自動的に保たれます。

例えば平面図で壁の位置を変更すれば、立面図や断面図も自動的に更新されます。

その際の手作業による修正漏れや不整合を防ぐことができます。

オンラインでの申請により窓口来訪が不要になる

オンラインでの申請が可能になることで、窓口への往復時間が不要になります

特に地方の設計事務所にとってこの時間の削減効果は大きく、その分を設計業務に充てることができます。

審査期間の短縮が期待できる

従来の建築確認審査では、審査者は意匠図(建物の形や外観を示す図面)、構造図(柱や梁などの構造を示す図面)、設備図(電気や配管の位置を示す図面)など、それぞれの図面を一枚一枚照らし合わせて、内容が正しく一致しているかを確認する必要がありました。

この確認作業だけでも多くの時間がかかっていました。

一方で、BIMで作成した図面は、すべて同じ3Dモデルから作られるため、図面同士の整合性が自動的に保たれ審査者がこれまで時間をかけて行っていた図面同士の照合作業を減らすことができます。

審査をする側のメリット

設計内容の把握が簡単になる

これまでの審査では、平面図、立面図、断面図など、複数の図面を見比べながら、頭の中で建物の形を想像する必要がありました。

特に吹き抜けのある空間や、複雑な形状の建物では、図面だけでは空間構成を正確に理解することが難しいケースがありました。

しかしBIMでは、3次元モデルを自由に視点を変えて確認できます。

そのためこれまで図面だけでは分かりにくかった部分も、より直感的に確認することができるようになります。

整合性確認の作業が省略できる

BIMでは、すべての図面が同じ3Dモデルから自動的に作成されるため、図面同士の整合性が保たれます。

例えば平面図で柱の位置を変更すれば、関連するすべての図面が自動的に更新されます。

そのため、審査者はこれまで図面の整合性確認に費やしていた時間をより重要な審査業務に充てることができるようになります。

複数人による並行作業が可能になる

従来の紙の図面による審査では、同じ図面を複数の審査者が同時に確認することは困難でした。

またPDFによる電子申請でも、データの更新管理や審査者間の情報共有に手間がかかっていました。

一方でBIM図面審査では、クラウドシステムを活用することで、複数の審査担当者が同時に同じデータにアクセスして作業を行うことができます。

例えば、審査者Aが意匠関係の審査を行っている間に、審査者Bが構造関係の審査を並行して進めることができます。

また審査者同士のコメントや指摘事項もクラウド上で共有できるため、スムーズな連携ができるようになります。

これまで順番に行っていた審査作業を並行して進められるようになるので、全体としての審査期間の短縮につながります。

BIM図面審査のスケジュール

建築確認のデジタル化は、段階的に進められていきます。

国土交通省は、建築業界全体のスムーズな移行を考慮して、以下の3段階で導入することを決定しました。

第1段階:2025年 電子申請の本格稼働

まず2025年から、建築確認申請の電子申請が本格的に始まります。

これは現在の紙ベースの申請からデジタル化への第一歩となるでしょう。

申請者はオンラインで図面を提出でき、審査機関とのやり取りもインターネットを通じて行えるようになります。

この段階では、提出する図面の作成方法は従来通りで構いません。

第2段階:2026年春 「BIM図面審査」の開始

2026年春からは、BIMソフトウェアで作成した図面による申請が可能になります。

● 審査対象は従来通り図面(PDF)となります。
BIMデータは参考資料として扱われ、形状の理解や整合性の確認のために使用されます。
● 具体的には以下の3つの書類を提出する必要があります。

  1. 建築基準法規則第1条の3に規定する図書及び書類
    入出力基準に従って作成されたオリジナルデータから出力されたPDF形式の図書。
    PDF形式の図書は、規則第1条の3に基づく図書の種類と明示事項を満たすものとする。
  2. IFCデータ PDF形式の図書を出力したオリジナルデータと同一のオリジナルデータから出力された IFCデータ。
    IFCデータは、IFC 2.3.0.1 Coordination View 2.0(通称 IFC2×3)を原則とする。
  3. 設計者チェックリスト
    入出力基準に従いBIMデータの作成等を行ったことについて、設計者が申告を行う書類。

(引用元:国土交通省のガイドライン(素案)「2-1 BIM図面審査の定義」「(1)提出物」)

第3段階:2029年春 「BIMデータ審査」の開始

最終段階として、2029年春からBIMデータ審査が始まります。

第2段階・第3段階で注意すべきは、BIM図面審査とBIMデータ審査の違いです。

第2段階のBIM図面審査では、BIMデータはあくまで参考資料として扱われ、審査対象は従来通りの図面(PDF)です。

一方で第3段階のBIMデータ審査では、BIMデータそのものが審査対象となります。

BIM図面審査に向けての懸念事項

BIMソフトウェアの導入

BIM図面審査の開始に向けて最も大きな懸念事項の一つが、BIMソフトウェアの導入コストです。

BIMソフトウェアは一般的なCADソフトと比べて高額であり、特に小規模な設計事務所にとっては大きな投資となります。

またソフトウェアの導入後も、スタッフの教育・訓練に相当な時間と費用が必要となります。

データ作成の標準化への対応

BIM図面審査では、「入出力基準」に従ってBIMデータを作成する必要があります。

データ作成には、従来の設計手法とは異なる新しいワークフローの確立が求められます。

特に、IFCデータの作成と出力については、ソフトウェアごとに方法が異なる可能性があり、その標準的な手法の確立と習得が課題となります。

既存の業務フローの見直し

設計事務所内の業務フローを、BIMを前提としたものに変更する必要があります。これまでの2D CADベースの設計から、3Dモデルを基本とした設計への移行には体制の整備が求められます。

セキュリティの確保

クラウドシステムを介してデータをやり取りする際のセキュリティ確保も懸念事項と言えるでしょう。

建築プロジェクトの機密情報保護のため、適切なセキュリティ対策の実施と、スタッフへのセキュリティ教育が必要となります。

人材確保と育成

BIMを扱える人材の確保と育成も大きな課題となっています。

特にBIMソフトウェアを使用して正確な3Dモデルを作成し、確認申請に必要な図面を出力できる設計者の育成が急務です。

またBIMデータの品質管理ができる技術者も必要不可欠でしょう。

こうした専門性の高い人材の育成には相当な時間と費用がかかることが予想され、特に小規模の設計事務所にとっては大きな課題となることが予想されます。

移行期間中の二重業務

2026年春のBIM図面審査開始に向けた準備期間中は、従来の申請方法とBIMによる申請の両方に対応できる体制を整える必要があります。

この二重業務への対応は、小規模な事務所にとって大きな負担となる可能性があります。

まとめ

  • 「BIM図面審査」は2026年春からスタート
  • オンライン申請で、時間と手間を大幅に削減できます
  • BIMソフトウェアで図面の整合性が確保できるため審査期間が短縮
  • 今後、多くの事業者にBIMソフトウェアの導入や準備が必要になる
  • 2029年春からは「BIMデータ審査」がスタート
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