数ある評価書の中で『住宅省エネルギー性能証明書』は建築士が発行できる評価書です。
審査機関の審査もないので、時間とコストを抑えることができ、住宅ローン控除や贈与税などの減税制度の申請に使用することができます。
目的に合わせて最適な評価書を選択できるよう『住宅省エネルギー性能証明書』の仕組みもしっかり理解しておきましょう。
『住宅省エネルギー性能証明書』を取得できる建物の条件
『住宅省エネルギー性能証明書』を取得できるのは新築の戸建住宅と共同住宅等です。
ただし、原則として工事が完了し、建築士法施行規則(昭和 25 年建設省令第 38 号)第17条の15に規定する工事監理報告書又はその写しが提出される物件に限ります。
『住宅省エネルギー性能証明書』で評価できるのは、外皮性能基準(断熱等級)と一次エネルギー消費量基準(一次エネ等級)の2項目です。
具体的には「断熱等級4、一次エネ等級4の省エネ基準適合住宅」もしくは「断熱等級5、一次エネ等級6のZEH水準住宅」のいずれかの性能を満たしていることを示す、省エネ性能の評価に特化した評価書です。
『住宅省エネルギー性能証明書』を発行できる者
『住宅省エネルギー性能証明書』は審査機関で発行してもらうこともできますが、建築士自身で発行することもできます。
これは他の評価書にはない特徴のひとつです。
似た名前の「住宅性能証明書」という評価書もありますが、断熱等級または一次エネ等級のいずれかがクリアしていれば取得できる評価書のため、断熱等級と一次エネ等級の両方をクリアしているという証明には使えません。
『住宅省エネルギー性能証明書』を発行可能な4パターン
- 登録住宅性能評価機関
- 対象住宅を設計・工事監理等を実施した建築士(登録された建築士事務所に所属していること)
- 指定確認検査機関
- 住宅瑕疵担保責任保険法人
『住宅省エネルギー性能証明書』は建築士自身で発行することもできますが、審査機関で発行してもらうこともできるため、自分の名前で発行することに抵抗がある場合はうまく活用していきましょう。
『住宅省エネルギー性能証明書』の取得目的
『住宅省エネルギー性能証明書』は住宅ローン控除や贈与税などの減税制度を申請する際の書類として使用することができます。
①住宅ローン控除で使用する場合
まず、住宅ローン控除についてです。
『住宅省エネルギー性能証明書』で「省エネ基準適合住宅」の等級4をクリアできれば3000万円、「ZEH水準省エネ住宅」のクリアで3500万円の控除を受けることができます。
『住宅省エネルギー性能証明書』で控除が受けられるのは「ZEH水準省エネ住宅」までで、さらに上の控除を受ける場合は「長期優良住宅」や「低炭素住宅」を取得する必要があります。
住宅ローン控除は令和6年の法改正で省エネ基準をクリアしていない「その他の住宅」では控除を受けられなくなりました。
(出典:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000017.html)
贈与税の非課税措置で使用する場合
次に贈与税の非課税措置についてです。
この措置は新築住宅を取得したり増改築したりする際に、祖父母や両親などの直系親族から資金贈与を受けたときに利用できる制度で、一般住宅も500万円まで贈与税が非課税となります。
「質の高い住宅」の場合は、1,000万円まで非課税になります。「質の高い住宅」であることを証明する際にも、『住宅省エネルギー性能証明書』でZEH水準の断熱等級5、一次エネ等級6を示すことで非課税措置を受けることができます。
(出典:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000018.html)
『住宅省エネルギー性能証明書』の申請から下付までの流れ
『住宅省エネルギー性能証明書』を取得する方法は主に建築士が発行する方法と審査機関が発行する方法の2パターンあります。
建築士が発行する場合の流れ
- 省エネ計算を自分または省エネ計算会社で行う
- 目指す基準をクリアしていない場合はクリアするまでの検討を行う
- 国土交通省の住宅ローン減税のホームページから証明書の書式をダウンロードし、記入する
審査機関で発行する場合の流れ
- 省エネ計算を自分または省エネ計算会社で行う
- 目指す基準をクリアしていない場合はクリアするまでの検討を行う
- 申請図書をまとめて、審査機関に提出する
- 質疑対応する
- 決裁後評価書が発行される
審査機関によっては『住宅省エネルギー性能証明書』の発行を行っていない所もありますので、審査機関での発行を検討される場合、提出予定の審査機関が『住宅省エネルギー性能証明書』の受け付けを行っているかどうかをあらかじめ確認しておきましょう。
まとめ
- 『住宅省エネルギー性能証明書』は建築士自身で発行することができる
- 建築士自身で発行する場合、費用と時間を抑えられる
- 住宅ローン控除や贈与税などの減税制度を申請する際の書類として使用できる
- 審査機関によっては受付を行っていないところがある
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